民藝

讃岐かがり手まり保存会の活動と支える人々

「嫁ぎ先の母(荒木八重子)が手まりをつくるとき、傍らには色とりどりの木綿糸が用意されていて、その美しさに目を見張りました」
保存会の現代表・荒木永子(写真中央)にとって、かがり手まりは、未知なる美しいものでした。
「その昔、讃岐のどの家にも手まりがあり、とくに私が生まれ育った観音寺市のあたりは手まりづくりが盛んな土地だったのに、まったく知らなかったんです」
もともと彫金を学んでいたこともあり、手仕事や小さいものへの興味は人一倍。義母がせっせと手を動かすその姿に誘われて、いつしか手伝いはじめていました。そして気がつけば、すっかり手まりづくりにのめり込んでいたのです。
現在の保存会は、産声を上げた観音寺市から高松市内へと拠点を移し、運営、指導スタッフと約150人のつくり手が、讃岐かがり手まりの技術を継承し、広く伝える活動を行っています。皆、木綿糸によるかがり手まりの穏やかな美しさや手仕事の楽しさに心魅かれて集まった人たちで、多くは香川県在住の女性です。
保存会の工房では、木綿糸を草木染めして彩り豊かにかがり糸を揃え、つくり手たちは色合わせに工夫をこらしながら、工芸品としてのしっかりとした技術指導を受け、基本から応用へと腕を磨いています。
「わたしと義母の手まりの雰囲気が違うように、人それぞれの色のセンスで手まりづくりができます。そこに楽しさがあると思います」
また、かがりに使う糸の準備や手まりの土台づくりなど、かがり手のほかにも、たくさんの手が手まりづくりを支えています。
完成した手まりには、手づくりの熨斗がかけられて、お客さまのもとへ。ひとつひとつに心を込めて、私たちは手まりをお届けしたいと思っています。